大企業からベンチャーへの転職が失敗する最大の理由

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転職相談には有料・無料含め、様々な相談が寄せられます。その中の一つに大企業からベンチャー企業に転職しようと思うが、意見を聞かせて欲しいという相談があります。

その際、筆者は「自分が大企業にいて、それなりの評価を得ているので、ベンチャー企業だったら余裕だろう」という気持ちがあるなら、辞めておいたほうが良いとお伝えすることにしています。

理由は明快で、大企業でいう優秀さとベンチャー企業での優秀さは定義が全く異なるからです

筆者自身、大企業を2社経験し、そのあとベンチャーを創業しています。また大企業時代は、一定の評価を得ていたという自負がありましたが、実際にベンチャーを立ち上げてみたところ、大企業での仕事の進め方とベンチャー企業での仕事の進め方の違いに戸惑い、アジャストするまでに相当な時間がかかりました

「創業の場合と転職では違うのでは?」と思われるかもしれませんが、ベンチャー企業を創業し、社員を抱え、仕事の仕組みをゼロから整備したからこそ、大企業とベンチャー企業の違いが明確にわかるものです。

大企業とベンチャー企業の違い:その1

具体的に何が違うのかと言うと、大企業は良くも悪くもドキュメントありきで、石橋を叩いて渡る文化であり、責任の所在も(担当が細かく区切られているため)どこか曖昧で、1つの物事を時間をかけて確実に進めていく傾向があります。

対してベンチャー企業は良くも悪くもやってみて考えてみようというスタンスで、ドキュメント整備は後回し。「これが石橋かどうかは通った上で確認しよう」という考え方で物事をすすめるところが大部分。また責任の所在が明確で、最終的には社長が責任を取るというケースがほとんどです。

大企業とベンチャー企業の違い:その2

業務スピードはさらに異なります。大企業は何を進めるにしても稟議をまわす必要があり、一定の金額以上になるとその手続きも煩雑で、プロジェクトの進捗が急激にダウン、結果的にプロジェクト開始まで数か月経過していたということも珍しくありません。(大企業では往々にして、この根回しが上手い人が優秀と評価されますが、この評価軸はベンチャー企業はないものです)

対してベンチャー企業には、稟議という概念がなく、根回しなどは不要です。社長が即断即決し、即日プロジェクトがスタートすることもあります。
つまりプロジェクトの根回しができるかどうかは関係なく、スタートしたプロジェクトを成功に導けるかどうかが重要な評価軸になります。

これはどちらが良い悪いという問題ではありません。大企業はドキュメントをしっかり整備し、内部のリソースをしっかり分配するため、万一何か問題が起こった場合もリカバリーが早かったり、誰かに引き継ぐ際、問題が起きにくいという利点があります。
一方でこのスピードの遅さが致命傷となり、ベンチャー企業との局地戦に負けてしまうケースが多いのもまた事実です。

ベンチャー企業は、自分たちの目標を達成するためなら、新しい技術の利用にも積極的で、何より無駄な事務処理に追われることなく、自身の意志と責任でどんどんプロジェクトを進めることができるので、最前線の現場だと、むしろ大企業よりも有利というケースも少なくありません。

まとめ

このように大企業とベンチャー企業では仕事の進め方も文化も大きく異なります。仕事の進め方や文化が異なれば、優秀であるかどうかの軸がかわるのは当たり前のことであり、大企業で優秀な人材=ベンチャー企業で優秀な人材とは必ずしも言えないのです。

(※ただし大企業の人間がベンチャー企業で活躍できないという訳ではありません。むしろ大企業で優秀と評価される人間の中には、ベンチャー企業にはいないほど優秀な人材が存在しており、ベンチャー企業に来ても圧倒的なスピードでアジャストし、大活躍してくれる人材も存在しています。しかしながらそのような人材は非常に稀であり、多くの人は働き方の違いに戸惑い、良いパフォーマンスが出せない、もしくは出すのに時間がかかるのが普通です。自分をアジャストできる人材と定義するよりも、自分はそうではないと思っておくほうが、万一の場合のリスクをヘッジできるだけではなく、より建設的と言えるでしょう)

大企業からベンチャー企業への転職が失敗する最大の理由は、大企業で働き、一定の評価を得ていたことから起こる勘違いに起因しています。つまり大企業の人間が、ベンチャー企業型の働き方では、通用しないケースが多々あるということなのです。

特に私のように「自分なら大企業でもまずまずの評価を得ていたから大丈夫だろう」と、安易な考えで転職する方が最も危険です。 そういう方は、一度本当に冷静になり、自分がベンチャー企業の働き方に向いているのかどうか、見つめなおしてみましょう。その上でチャレンジするのであれば、万一上手くいかないことがあったとしても、乗り越えることができるはず。

それが大企業からベンチャー企業への転職失敗を食い止める、最も有効な方法と言えるでしょう。